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グレートリセットの先に

『デジタル・ファシズム』 堤未果著 読了。

マイナンバーカード作成を強要されることなど、国のデジタル化推進のやり方には嫌悪感を感じていたけれど、デジタル化というものの背後にある闇がこんなに深く濃いとは、浅学のためよく理解できていなかった。巨大資本とその背後にいる大国の思惑に支配され、一般民衆は個人情報を搾取され、プライバシーを蹂躙され、それにより支配される。富はより高いところへと流れ、我々は「利便性」という快い笑顔に騙されて、まんまと詐欺に遭っている被害者のようなものだということ。

日本政府は、決して国民の方を向いているのではなく、米中の言いなりであり、巨大資本の下僕に成り下がろうとしているようにも見える。それを覆い隠すための美辞麗句によって、寄り添うマスコミの忖度によって、デジタル化を好意的に捉えている人々も多い。でも、デジタル化に賛同する人は、どこかで新しいものがカッコいい、古いものはダサいというような画一的な価値観に毒されていないだろうか?と思う。カッコいい自分に酔うために、大切な個人情報を危険にさらして良いの?

マイナンバーで個人情報が一元管理されたら、何がまずいのかもはっきり解っていなかった。経済状況から病歴まで何もかも丸裸で、それが漏洩したら大問題だけれど、国はもしかしたら、大国や巨大資本のためなら進んで漏洩させるかもしれない。

以前韓国のドラマを観ていて、韓国ではすべての国民の指紋データを警察が把握しているということを知り、ちょっと驚いた。そして怖くなった。韓国は30年と少し前まで軍事政権だったわけで、国の言うことを聞くのに慣れていて抵抗が少ないのかもしれないけれど、日本の感覚だと、警察に指紋を提出させられるなんて犯罪者扱いされている気分になるじゃない?

けれどそれよりもっと恐ろしいのは、TikTokをインストールするだけで、スマホが保持している指紋認証や虹彩認証などの生体情報まで中国政府に筒抜けになる可能性があり、自分の知らないところで事実上独裁の政権に最高級の個人情報を握られてしまっているかもしれないということなんだ。LINEも同じようなもの。データは韓国や中国にあったことが明らかになって問題になったのは報道されていたっけ。パスワードなら変えることもできるけれど、指紋や虹彩は一生変えることが出来ない。それを握られるのは恐ろしいこと。安易に生体認証を設定するのもちょっと怖いんじゃないかという気さえしてきた。

自分のスマホを盗難や犯罪から守れても、認証データなどを裏で盗まれているかもしれない。専門家じゃない限り、デジタル技術の中身はブラックボックスなのだし、何が起きているか完全に理解できる人は少ない。

デジタルマネーもそうだけれど、身近な目に見える犯罪から身を守るために、遠くからの目に見えない犯罪に遭遇するリスクを増してしまっているということ。お金のデジタル化が諸外国に比べて遅れている日本は、遅れているのではなく、リスクから一番遠くにいるということかもしれない。現金というものは最後の砦のようにも思えてくる。

私自身、現金決済で別に不自由は感じないし、現金で払うことくらいを面倒と感じるなんて、人としてどうかしているような気もする。キャッシュレスがスマートでカッコいいからと流されているだけ、世相に遅れを取らないようにと頑張っているだけなら、もっと本質を見なくちゃいけないんじゃないかな?

米ドルの基軸通貨体制により、アメリカだけが甘い汁を吸ってきた今までの体制は崩れていったほうが良いと思う。でもそれに取って代わるのが中国のデジタル人民元だったら、昔のほうがまだ良かったとなりかねない。世界共通のデジタル通貨のようなものができるかもしれない。どうなるにしても、その背後に利権が蠢いていて、権力の奪い合いという構図以外の何物でもないというのが事実なのかもしれない。

デジタル先進国エストニアでは、マイナンバーのように個人情報が国によって一元管理されているけれど、それを守ることにも細心の注意を払っていて、個人データにアクセスをした記録が開示され、誰がいつ何のためにアクセスしたかを自分で簡単にチェックできるのだそう。自分のデータを管理するのは自分で、消去したいものは消去もできるのだと言う。ロシアの脅威からそのように守りの面でも優れているシステムになったということ。それと同じように日本でもできるか?というのは今のままでは疑わしい。巨大資本がそれを望まなければ、それに流されるのが目に見えている。

 

インターネットの黎明期には、ネット上に個人の情報を上げるなんて考えられないことで、その匿名性に守られていた。本名や自分の写真など、今では普通に公開している。Facebookが実名登録を促すようになって、またスマホが普及して変わった気がする。私は昔の感覚がそのままなので、自分の写真を上げるなんて信じられないこと。登録する誕生日さえ本当の誕生日は入力しないようにしてきた。ネットがあまりにも側にあるようになって、本当に文字通り「網」にかかった獲物のようになっているのに気づきにくくなってきたと思う。もう少し警戒心を持たないといけないと自分にも改めて言い聞かせないと。

個人情報は巨大資本にとって宝の山で、幾つかのデータの集合をかけ合わせれば、簡単に個人の輪郭を鮮やかに浮かび上がらせることができる。興味の方向から病歴などセンシティブなデータまで、自分自身より自分をよくわかっているのはそれらの大企業で、彼らの儲けのために一挙手一投足を予測され、そのとおりにコントロールされ、結果として知らないうちに搾取されている。彼らの金儲けのために世界が動かされていて、それを革新とか進化とか呼んでいるだけなんだ。

必ずしも必要のないアップデート、必要のないスピード感、それはその変化を起こすことによって儲かるからだ。ひと昔前は、停滞しているからもっと斬新な変化を起こさないといけなかった。今は、変化に次ぐ変化で、もう変化はさほど必要ないのに、それでも無理やり変化を起こす。利用者は目まぐるしい変化を楽しんでいる人もいるだろうけれど、内心はもう疲れたという人も多いはず。クラッシュアンドビルドを繰り返すのも、その過程で儲かるから。復興する過程は格好のビジネスチャンス。資本は儲かることしか考えていない。人々の幸せも、国家の平和も、そんなものはゴミ以下の価値しかないんだ。もうそんなサイクルは終わりにしたい。

「グレート・リセット」とよく言われているけれど、それが具体的に何を意味しているのだろうか。今の資本主義に変わる別の資本主義じゃなく、全く別の何かが始まらないと、地球は本当に壊れてしまうんじゃないかと思う。

私は壊れていく方の地球でなく、新たな何かが始まる地球の方に存在すると以前から決めている。