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父との諍いが起こるたびに
父がいなくなった後にとんでもなく後悔するのではないかと怖かった
いなくなって初めてその存在の大切さがわかるとよく言うし
孝行したい時に親はなしともよく言うし
私は後悔して打ちのめされて目が覚めるのだろうと思っていた

実際に父がいなくなって
心配していたようなことは一切起こらなかった
不思議なくらいに後悔はなかった
やることはみんなやったという清々しささえあった
あんなに声を荒らげて怒鳴り合ったことも
何一つ悪いことではなかったような気がする
諍いも愛の一部だなんて言いたいわけではなく
全身全霊でぶつかったことに価値があると言いたいのでもなく
なんだろう
全てこれで良かったんだという思いだけ
すべて過ぎ去ったこと
美しくも醜くもないただの記憶
心が凪いでいる

父に詫びたい気持ちもない
思い出して悲しくなったりもしない
会いたくなりもしない
懐かしくもない
この静けさが不思議で仕方ない
こそばゆいわけでも居心地が悪いわけでもなく
ひたすらに不思議なだけ