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三白眼の男性

私は音楽室にいた。午後の日差しが斜めに差し込み、細かな埃が踊る様子が光の中に浮かび上がる。どこかノスタルジックな光景。ピアノの鍵盤を叩く。長い間調律されていないピアノは、若干音程がずれていた。その音色が余計に郷愁を掻き立てるように感じられた。


私はピアノの傍に立ち、俳優Jに似た男性と話をしている。とりとめのない話を、もうずいぶんと長い時間しているように感じた。男性は長机に両肘を乗せ、頬杖をつく格好で腰掛けていた。彼は切れ長の美しい目をしていて、見事な三白眼だった。
「もし白髪になってきたら、染めるのもアリかな?」と彼は訊いた。白髪を染めるのは若作りをしているようで逆に格好悪いと思っているのだろうか?「そんな俳優のような顔をしているんだから、染めないともったいないんじゃない?」と私は答えた。


そこへ彼の先輩にあたる女性が現れた。彼の隣に腰掛け、同じように頬杖をついた。
「だめだめ、そんなこと言っちゃだめ!」と先輩は言った。初対面の私に対して、非常に好意的な親しみを込めた物言いを、彼女はした。「あまりおだてると調子に乗るから?」と、私もくだけた言い方で答えた。先輩は、大袈裟なジェスチャーで首を三回ほど縦に振ってみせた。
先輩は、彼と私がいい雰囲気であると誤解をしたようで、悪戯っぽい笑みを浮かべて去っていった。そんな誤解をされたのが恥ずかしいのか、また別の感情からか、頬が熱くなるのを感じた。