ある朝、母の顔を見ると大きくむくんでいて、目の下の皮膚もかなり青黒くなっていた。私はなにかの病気ではないかと心配になった。母に話しかけるが、受け答えがどうにもとんちんかんだった。尋ねたことと微妙にずれた答えが返ってくる。
おかしいなと思いつつ放置していると、ますますおかしなことを言い出すようになった。
今日は、佐藤さんと球場を見に行くのよ。球団を買収する計画があるの。驚いて問いただすと、詳しいことは佐藤さんでないとわからないと言う。
また別の日には、山本さんと石油の採掘に行くの。掘り当てたら億万長者になるわよ。
私は大声で泣き出した。ママがおかしくなっちゃった！ 私は７歳の子供になっていた。
母は子供の私を抱き寄せて、よしよしと頭を撫でてくれた。その時の母の手は優しくて、バグを起こすことはなかった。
