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核融合のような

『渇き』 2009年のパク・チャヌク監督作品を観た。
気持ち悪い!どうしようもなくグロテスクだし気色悪い。もう吐きそう。なのに、何なんだろう、圧倒的な力で揺さぶられる。衝動が地核の奥深くから轟いてきて、精神を粉々に砕かれるようで。

映像のどの瞬間にもどの隅々にも、どれほど拡大しても電子顕微鏡で見たとしても、フィルムの毛細血管に監督の血が流れ、監督のDNAが埋め込まれている。映像が完全に監督の肉体と化している。

この映画はアートそのもの。日々の社会生活の垢が溜まり、白く体を覆い尽くしミイラのような外見になっている自分、コンクリートのような灰色にうずもれて息絶え絶えになっている感性──印字された新聞紙のような生を生きていることを思い知らされる。剥き出しの精神の核。原子核融合がそこで起き続けている。凄まじい。

キム・オクビンが凄かった。一挙手一投足、全身に漲る表現力。身体的に語る能力が抜きん出ているように感じて、この女優さんは舞台芸術か何かの出身なのかなぁと思ったけれど、違うらしい。テレビドラマ「剣と花」で一度見たことがあったけど、こんな演技をする方とは知らなかったので驚いた。

内容はエロいしグロいし、もう説明したくない。言葉にしてもこの映画の凄まじさを正確に表現できそうにない。ストーリーよりも、映像の一コマ一コマが残す鮮烈な印象と、人物の圧倒的な存在感とが上回り、筋書きのほうが添え物のように感じる。

二人の人間の、全身の血液が混じり合うというのは、官能のひとつの極北。
バンパイアとなった二人がともに朝日を浴びるラストシーンは圧巻だった。同じ瞬間に消えることができるなら、ある意味では羨ましくもある。

オールド・ボーイ』『お嬢さん』も以前観たけど、もう一度観たくなった。