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隕石の堆積場

クレジットカードを紛失する

久しぶりに都内へ買い物に出ていた。友人二人と一緒だった。かねてから存在は知っていたが行ったことのなかった天然石の店へ、行ってみたいと急に思い立った。
その店は名前も経営者も変わっていなかったが、天然石の店でなく、天然酵母のパン屋さんに変わっていた。


時間帯が悪かったのか、店内に並んだパンは少なかった。焼き立てのものがあまりなく、袋詰めされた定番のパンが多かった。私がテーブルロールのようなふわっとした丸いパンが袋詰めされたものを手に取ろうとすると、レジの奥から店長に声を掛けられた。今焼き上がったのがあるよ。
レジの横には、テーブルロールとは似ても似つかない、煎餅のようにぺしゃんこに潰れたパンが山積みに置かれていた。強力に薦められるので、私はその煎餅のようなパンを買うことにした。それ以外にも数点の食パンやフランスパンを買った。
合計で2万と130円。ありえない高額なのに、私は当たり前のように支払いをしようとした。クレジットカードを財布から取り出すと、出てきたのは白い紙製のカードに、私の住所氏名が手書きされたものだった。私の筆跡ではない。氏名の漢字も微妙に間違っている。緑(みどり)と縁(ふち)が見分けがつきにくいように、似ているけれど違う文字。中国語のようにも見えた。


どこかで間違って、本物とこの偽物を取り違えてしまったのだろうか。頭が混乱する。現金が足りるだろうか。
隣りにいた友人に、もし足りなかったら建て替えてくれる? とお願いしてみたけれど、彼女は当惑した顔で、そうしてもいいけど、とりあえず財布をよく見てみたら? と籠もった早口で答えた。ずいぶん冷たいものだ。そんなに親しいわけでもないし、この程度の友人だということなのかな。
ともかくカードがどこですり替わってしまったかを考えなければ。ひとつ前に寄った店で、支払いのときにレジで確かにカードを渡した。きっとその時だ。私はその店へ急いだ。


ひとつ前に寄った店に着くと、そこも天然石の店からパン屋に変わったばかりの、同じ店だった。店長に問いかけようとしたが、手帳を手にした男性と深刻な顔で何かを話している最中だ。手帳の男性は、眼鏡をかけて眉間に皺を寄せ、いかにも刑事か、探偵のような雰囲気だった。
やはりこれはなにかの事件なのだ! 刑事が出てきたのなら安心だろう。私は店長ではなくこの刑事に話しかけようと、会話が途切れるのを待っていた。彼が本当に刑事かどうか確かめようともせずに。

 

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